2条電子署名は認印、3条電子署名は、実印-第11回 成長戦略ワーキング・グループ議事概要を読む

さて、第10回 成長戦略ワーキンググループでの議論を3回にわけて見たわけです。業者省庁押印問題とそれぞれのエントリです。

さて、このエントリでは、5月22日の第11回 成長戦略ワーキング・グループの議事録を検討します

5月下旬から、電子署名廻りの議論を追っかけているのですが、それは、どうも、今年に入ってからの、リモートワーク対応のための法的な議論をしている際の、業界関係者が、電子署名法の制定当時の考え方を無視して、勝手に、電子署名というのは、デジタル署名のことのみをいうと解して、それで、電子署名法が時代遅れであるといっているのではないか、そして、それは、当時の関係者の努力を踏みにじるものであって、あまりにも失礼なのではないか、という問題意識があったからです。

このような問題意識から、電子署名法は、技術中立的な考え方に基づいて構築されており、広範な2条電子署名と、推定が認められる3条電子署名からなりたっている、ということを書いてきました。

エントリとしては、

電子署名法の数奇な運命

リモート署名は電子署名である&クラウド型電子契約にお墨付き

になります。

このことが、確認されているのが、今回の議事録になります。議事録としては、21ページ以降になります。

問題としては、会社法の問題で、しかも、この5月22日の資料で述べた見解が、後に撤回されたということになり、その点からも注目されている回になります。この撤回について、ふれたエントリは、「取締役会の議事録承認 クラウドで電子署名 法務省、手続き簡素に」になります。

資料としては、論点に対する論点に対する回答(1-3)です

法律上,出席した取締役及び監査役の署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならないこととされているが(会社法(平成17年法律第86号)第369条第4項),省令において,その措置は電子署名の方法によるものとされている(会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第225条第1項第6号)。当該電子署名の要件としては,電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号。以下「電子署名法」という。)第2条に規定する電子署名の要件と同じ要件が定められており(会社法施行規則第225条第2項),その範囲は電子署名法における電子署名の範囲と同様に解される。

でもって、

リモート署名でございますけれども、電子署名法上の解釈として要件を満たすということであれば、取締役会議事録に付された電子署名がリモート署名であっても、それは認められるものだろうと認識しております。

という回答がなされています。この点については、リモート署名は、規範的に本人が署名するのと同一視できるので、いいのではないか、という認識で一致していたところですので、特に問題はないでしょう。

一方、電子契約事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービス、電子契約事業者が自ら電子署名を行うサービスにつきましては、なかなか議事録等を作った方の電子署名と考えることは難しいということで、会社法令上の書面について事業者が付した電子署名につきましては適切なものではないのではないかという考えに至ってございます。

既に、「取締役会の議事録承認 クラウドで電子署名 法務省、手続き簡素に」というエントリでも見たのですが、このような立会人型というのは、実際は、当事者も電磁的な措置を行います。私としては、「「措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのもの」とは、「何か「効果意思」をもって、表明すること」で足りるのであって、特定の技術的なもので確保する必要はない」と解すべきであるとしました。すると、この場合でも、当事者は、電子署名を行っているということができることになり、この回答は、おかしいことになります。

この回答についての議論が、いわば、噴出します。まずは、高橋委員から

会社法に書いてあることが委任されて会社法の施行規則になっている。これは法務省令だと思うのです。だから、法務省令で、会社法の範囲で今回の事態を踏まえて変えられるわけです。
しかしながら、御回答は自分で決めた会社法施行規則の解釈から結論を示されているのです。それでは、今回の事態の対応としては極めて不十分ではないかと思います

という批判がなされて

三文判の認印でもいいのですよね。認印であれば、なぜ会社法施行規則でこんなに厳しく電子署名について縛っているのかというのも分からないということになります。

と批判されることになります。落合先生からも同様の批判がなされます。これに対して、法務省 篠原係長は、

会社法上の議事録が電磁的記録の場合でありますと、そこに付される電子署名というのはいわゆる電子署名法2条の電子署名でよいということでございますので、3条ではなくて比較的要件の緩い電子署名で、例えが悪いですけれども、三文判に相当するものを電子署名法2条で定めていると考えれば、レベル感としてはそろっているのかなというところでございます。

という回答をしています。これに関連して

電子署名法2条の電子署名の要件に加えまして、3条の方で本人性をより厳しく問うている構成になってございます/電子署名法2条と3条の世界で、電子署名法3条というのが実印の世界、2条が文書で言うと三文判の世界みたいな形になっております。

という表現もなされています(28頁)。

図で示すと

の右側の構成が確認されているところになります。

あと、高橋議長代理から

三文判でもいいわけですし、それから電子署名についても改変がなければいいということですから、例えばPDFなりタイムスタンプを押されたデジタル化された文書をメールでやり取りして、本人がそれでいいと了解していれば、もう電子署名を付すまでもなく、私は役割を果たしていると思うのです

という発言もなされています。もっとも、高橋委員は、

髙橋委員 2条がハードルが高いのではないでしょうかと言っているのです。

といっており、デジタル署名にこだわっているようにも読めます(28頁)。

あと、具体的なドキュサインとか、クラウドサインというサービスについての議論もでています。篠原課長は

はい。一般論として存じ上げております。

という回答ですので、これは、反対尋問であれば、具体的な手順については、知らないといっているように聞こえます。

その文書をつくった方が電子署名をしているということではないところで、なかなか登記の申請等において用いていただくのは難しいと認識しております。

という答えがあります。ここで、弁護士的には、反対尋問の機会がやってくるわけです。

もし、篠原課長が、2条電子署名の定義を聞かれたとすれば、広範な電磁的措置でたりると答えるはずです。そうだとすれば、「画面がでて、この内容で、了解しますね、契約成立させますよ」というのを確認してOKを押す構成になっています。これは、電子署名ですか、と聞くわけです。

この電子署名に該当すると答えれば、回答が間違っていたということになるかと思います。もし、該当しないといったのであれば、では、2条の要件は、具体的になんなのですか、と聞くことになります。この場合、3条要件との違いをたぶん説明できないことになるでしょう。

その上で、大塚副大臣から

クラウドサインみたいなサービスを本人の指図でない状況で署名が付されてしまったということが生じるリスクと、認印を全然別の人が押してしまったというリスク、どちらの方が確率的に高いと思いますかということです。

と問いただされれば、回答のうち、立会人の部分について撤回するしかないでしょうね。

これが、6月1日付けの

当該措置は,取締役会に出席した取締役又は監査役が,取締役会の議事録の内容を確認し,その内容が正確であり,異議がないと判断したことを示すものであれば足りると考えられます。したがって,いわゆるリモート署名(注)やサービス提供事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービスであっても,取締役会に出席した取締役又は監査役がそのように判断したことを示すものとして,当該取締役会の議事録について,その意思に基づいて当該措置がとられていれば,署名又は記名押印に代わる措置としての電子署名として有効なものであると考えられます

というまとめ文書(リンクは、新経済連盟宛の文書)につながるものと考えます。

要は、具体的な実態を知らないで、立会人型について、事業者しか電子署名をしないとしたことが誤っていたのに議論のなかで気がついて、後日、直ちに撤回したというように私は理解します。当事者も(2条の)電子署名をしているのだ、ということに気がついて、それで認印とのバランスをとるべきだと認識したと推測します。

その意味で、二段階(two-tier)アプローチを取っている他の国々と同様の立場に日本もたっていたことが20年ぶりに確認されたことになるかと思います。