電子署名に関して「第10回 成長戦略ワーキング・グループ 議事概要」を読んでみた(押印に関す る民事訴訟法上の規定部分)

省庁関係の電子署名法についての説明についで、「押印に関す る民事訴訟法上規定部分」についての議事概要の説明部分になります。

法務省(大野参事官)からの説明です。スライドは、こちらですね。エントリでは、「法務省、「はんこ社会」に引導」で触れましたけど、「自分たちがデシタルに移行できないのを、法律のせいにするな(○-カ)、といっている」ように思えるスライドについての説明になります。

最初は、形式的証拠力と実質的証拠力の説明です。法律家的には、民訴法の授業を取っていれば、基礎中の基礎です。政府の委員会で、このような説明をしなければならないというのは、なかなか大変だろうな、と思ったりします。

でもって、

民事訴訟法228条4項というのは、文書などへの押印の要否について定めたものではございません。入り口である誰が作ったかということを判定するに当たって、反証が可能な事実上の推定を規定しているにとどまるものであり、そのため、民事訴訟法228条4項の解釈として、いかなる場合に押印が必要であるかということを導き出すことは困難です。それについては、業界の慣行や取引当事者がそれぞれ決める事柄なのではないかと考えているところでございます。

という説明がなされています。個人的には、しごく当然のことになります。

ではありますが、そもそも、電子化移行への障害が、民訴法228条4項であるという人がたくさんいるように思えています。代表的な意見をとり出してみましょう。

民訴法の判例解釈を通じた現在の運用は、認印という紙の判子についても推定効を認めるわけですね。これは書面と電子署名の差別なのではないでしょうか。

判子の場合は、その有体物の保有から、成立の真正性の推定が及ぶ、それに対して、電子署名は、その措置をなすための物件の保有から、推定はおよばないではないか、差別であるという主張のようです。

電子メールアドレスの保有者が電磁的措置をなした場合に、電子メールアドレス保有者から、作成されたことを推定してもいいのではないか、というのであれば、そうだと思いますし、それは、技術的なものを明らかにすれば、特に問題はないでしょう。しかしながら、それは、裁判所が解釈で定めることだということで、それはそのとおりです。3条の推定効を広く解釈して、それが電磁的措置に及ばない、けしからん、だから、利用が進まないというのは、議論としておかしいと思います。

3条の構成上、その電磁的措置をなした者が、本人であることが必要なわけです。本人が電磁的措置をなしたものであることについては、この条文上、推定効が及びません。

3条の推定効というのを議論する時に、何が推定されるのか、そのレベルは、どうなのか、とうことが明確ににならないと正確な議論にならないだろうと考えています。

UNCITRALあたりだと、事実を認めるための基礎となる事情と心証のレベルの問題は議論されています。たぶん、わが国では、趣旨として、改ざんについては、レベル的に、改ざんされたならば、技術をもって表示される仕組みが必要になっているように思えます。しかしなから、本人の確認については、よくわかりません。さらに、3条の推定は、本人の措置は、別の法律要件で認定がなされたあとにるので、判子とパラレルにもともと議論できないように思えます。

あと、いうまでもないですが、裁判で、真正性が争われることは、本当にまれなはずです。そうであるにもかかわらず、

不当な差別を定める民訴法のせいで、契約の電子化がすすまない

というのは、私には、いいがかりのように思えます。証拠能力と証拠力の使い分けをして議論してほしいところもあります。

落合先生からは、

真正について争われていない、認めるという答弁だけがされているような場合については、そもそも民訴法228条の問題にならないと思いますが、これについては実際に問題になっているのがどのぐらいの割合があるかと思いました。この割合が必ずしも高くない、もしくは裁判例で判断されている例が必ずしも多くないということが、裁判例が年に何件あるかというのは客観的な情報として存在すると思うのですけれども、そのうち何件が争われたかというのは、例えば判決上のものであれば統計自体は可能だと思うのですが、これについてもし御存じであれば教えていただければと思います。

という質問がなされています。

このようなやりとりのもと、押印Q&Aにつながったかと思います。この内容の分析は、次のエントリで。