「検閲」についてコメントする前に気をつけたいこと

以前、NOTICE騒動(?)のときに、「「通信の秘密」にコメントする前に気をつけたいこと」というエントリで、通信の秘密といっても、電気通信事業法と憲法とでは概念が違いますよということを説明しました。実は、そのときに、検閲の概念について逐条解説で、利用者の宅内の情報についても憲法の検閲の禁止が及びうると解しうる記述があることに触れていました。しかしながら、厳密に考えることはしませんでした。

「電気通信事業法における検閲の禁止とは何か」というエントリを読んで、「検閲」概念についても、きちんと考えて、触れておくとよかったなあ、と思ったので、ちょっと書いてみます。

まず「検閲」の禁止というと、普通は、憲法の 憲法21条2項にいう「検閲」を思い浮かべて、 税関検査事件の 「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるもの」と判示がスラスラと(?)でてくることになります。キーポイントは、(主体)行政権(対象)内容(前提行為)発表前の審査(禁止行為)発表禁止なので、ブロッキングについて「検閲の禁止」に触れるという説には、「発表前」とはいえないんじゃないの?、ということになります。なので、実務家的には、「ブロッキングと検閲ねえ。ふーん」という回答になるかと思います。

電気通信事業法3条にも「 電気通信事業者の取扱中に係る通信は、検閲してはならない。」ということで検閲の禁止の概念があって、それとの関係はどうなんだろう、ということになります。

この検閲は、「一般に国その他の公の機関が強権的にある表現またはそれを通じて表現される思想の内容を調べることをいう」と解されています(電気通信振興会 逐条解説)。

 この規定は、国または公の機関が通信の内容を調べることはできないということになります。ブロッキングは、国の強権的な行為になるのでしょうか。義務付ける、しないと制裁がなされる、ということになれば、国の強権的な行為ということかもしれません(個人的には、この解釈はとらないのですが)。ただし、主体はあくまでも、プロバイダーなので、むしろ、主体のところで、3条の該当性は、微妙なような気がします。

この場合、利用者の宅内にある自営端末については、「 憲法21条2項(略)違反に該当する行為となりうる」としています。

ところで、どのような行為が、このコメントの「該当する行為となりうる」ものなのか、ということになります。 この場合は、憲法の解釈になるので、(実務家的には)上の税関検査事件 (最大判昭和59・12・12民集38巻12号1308頁))の判決例を前提とすることになります。

 発表前の審査行為/発表禁止が要件として必要になるのですが、それこそ、どのような場合でしょうか。アップロードする前に自分で保存している行為か、それとも、個々の通信で受信して、それを不特定多数に発表する場合になるかと思います。プロバイダが個別の通信の内容をみて、それを発表しそうだといって、コンテンツを発表できないよう技術的措置をとることを法律で義務づけて、制裁を準備する(検閲マシーン条項か?)ということがあれば、上のコメントの行為かもしれません。その意味で、憲法の検閲禁止のほうが、電気通信事業法3条より、適用範囲が広くなりうるわけです。

もっとも、逐条解説は、そこまで考えていないという読み方もできそうです。

「一般に」という枕詞がついているので、憲法でも同一の解釈ですと考えているようにも思えます。ただし、前の第一法規の逐条解説の段階(昭和62年版) だったとしても(この部分は、表現はほとんど同一)、税関検査事件は、判決としてでているので、考慮不足との批判を免れないでしょう。

 前に戻って、ブロッキングは、事業法3条の解釈の「検閲」に該当するのでしょうか。(とりあえず主体の点は、除く)  

(欧州型が導入されたとして)そのようなブロッキングは、自ら調査をなしたことによって知った場合ではなく、被害者から告知されて、プロバイダが、権利侵害情報を伝達している場合に、その通信データをもとに、伝達を停止する行為と位置づけています。このような仕組みは検閲概念には、該当しないとも考えられます(強制的な調査はない-裁判所が調査するということでしょ)。この点は、逐条解説の範囲を超えた推測です。

 現実に悪意になったあとに、手続保障がなされてブロッキングがなされることは基本権保障との関係で禁じられることではないという判決(UPC Telekabel Wien GmbH v Constantin Film Verleih GmbH, Wega Filmproduktionsgesellschaft mbH, C-314/12,の論点(3))は、参考になるかと思います。

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