検索市場の競争について-マイクロソフトポイント

競争分析もされずに、大きければ、叩いていいみたいな感じのプラットフォーム規制論ですが、検索市場の競争という観点から、見逃していましたマイクロソフトポイントです。

Bingを使っていて上の矢印のところをクリックすると、リワードのページがでてきます。

でもって、何と引き換えられるのかなというと、

悪くないですね。なんといっても、MSさんには、年貢というか、月貢を納めますので、それをそのまま引けるのであれば、かなり使えるだろうと。(ちゃんと寄付もしましょうね)

これをポイントサイトか、とつっこんでいる向きもあります。

でも、あなたの利用情報がお金をなるのをMSさんが素直に認めて、対価を支払ってくれているんですよ。確かにGさんに比べれば、検索サービスのクオリティについては、いいたいこともあるかもしれませんが、ならば、インセンティブをあげますというのは、きわめて素直なことです。

これを評価できないのは、自分の検索情報という無形の価値がきちんとお金に評価されるという仕組みを知らないこと、なので、自慢できないんですよ。

だから、規制にお金をかけるよりも、こういう競争状況をきちんと分析するほうが有意義なんじゃないのかなあと思っていたりします。

 

コンタクトトレーシングについてのNHK BS1 キャッチのインタビュー内容公開

当社社長  高橋郁夫が、NHK BS1 キャッチに5月18日に、出演しましたときのやりとりが公開されました。

プライバシーというのは、文脈によっても、国によっても、とらえ方かそれぞれであること、また、生命や行動の自由という尊重されるべき法益との衝突は、初めてであろうこと、そのもとで、各人が、どのような判断をするかが問われているかを、をまとめて伝えることができたかと思います。

やりとりは、こちらです。

なお、このやりとりのうち、プライバシーについてのとらえ方については、会社のブログで深堀をしております。そちらは、「コンタクトトレーシングアプリのプライバシー設計についての基本的な考え方」以降のブログになります。

邪教としてのデータ保護教

恐縮ですが、本エントリは、アマゾン社キンドル出版による「新型コロナ出版対プライバシー」出版のために、撤回させていただきます。

出版された際には、是非とも、購入をお願いいたします。

コンタクトトレーシングアプリの最適な設計のための考え方

 アプリケーションの受容についての、他の利益とのバランスをみて最適な規範という話をしました。

 この場合の規範については、禁止、原則禁止(オプトイン)、原則自由(オプトアウト)、自由放任、利用強制の手法を考えることができます。

 一方、これらの手法を適用すべき状況は、きわめて種々にわたります。また、上で、トラストという要素として検討しましたが、トラストの水準として高い(信頼できる)、普通、低い(信頼できない)と考えたとしても、利用者からみて、それぞれの要素がトラストにどのような影響を与えるのか、というのは、ほとんど議論されていません。

 具体的には、利用者からみて、自分の個人情報を、企業が経済活動に利用する場合に、名前の知られている企業が利用するとして、どの程度、利用を許容したいと感じているのか、ということと、自分の個人情報を、医師などの専門的な資格をもった者が、その専門的な倫理のもとに設定された行動規範に基づいて情報を取り扱う場合に、個人が、どの程度、利用を許容したいと感じているのか、というのを比較して、どの程度、個人の認知に影響に違いが発生するのかというのは、まだ、きちんと議論されていないということです。
 また、個人情報か否かによって、現行法の体系のもとでは、根本的な違いが生じる枠組になっていますが、はたしてそうなのか、という問題もきちんと議論されていないといえるでしょう。
 

現時点においては、電子マネーの受容について実験した場合に、利用者は、人数比でみた場合に、経済利得重視派(62.2%)、プライバシー重視派(28.0%)、機能重視は(9.6%)、との3つのクラスター に分けられるということが観察されるということがいえます(図1)。 

「eID に対するセキュリティとプライバシに関するリスク認知と受容の調査報告」(IPA) の63頁

コンタクトトレーシングアプリについて考えてみましょう。これと、検索から広告を配信するモデルと比較してみましょう。上記のトラストを支える要素を挙げて考えると、利用者からみると以下のようになります。

  現代社会のプライバシー保護の枠組は、個人データ保護という仕組みを用いて、上記の検索から広告を行うという場合に対しても、利用者がトラストをもって利用できるような枠組を構築してきました。

 しかしながら、そのような枠組をそのまま、コンタクトトレーシングアプリのような信頼をもって利用できるようなトラストの要素に配慮してデザインされた仕組みを評価するべきなのか、という問題を提起することができます。

  法は、公衆衛生の目的がある場合については、個人データ保護の枠組で準備されている種々の原則の適用が及ばない場合をも準備しています。

 しかしながら、少なくてもEUのツールキット、ガイダンスの解釈は、コンタクトトレーシングアプリについて、原則禁止のモデルを当てはめています。はたして、この当てはめは、人間の気持ちに素直なものなのでしょうか。

 コンタクトトレーシングアプリについて、上記のような電子マネーについての実験をしたとしたら、上記のような結果と同じ結果になるのでしょうか。

情報の種別が、コンタクトトレーシングアプリの受容については、ほとんど重要度の違いをもたないという結論が出たとしてもおかしくはないでしょう。また、そのアプリのもつ意味について考えたときに、アプリ利用料が少しくらいかかったとしても、それによって、自粛期間がほんのすこしでも短くなるのであれば、インストールしたいと考える人が圧倒的に多数であるということも考えられます。

 残念ながら、現時点において、コンタクトトレーシングアプリのもつ基本的な要素が、利用者のアプリの受容に対して、どのような差異をもたらすかという点についての実証的なデータは、存在しません。

もし、コンタクトトレーシングアプリの受容について、利用者にかかる情報の重要度が非常に低く、しかも、上述のようなクラスターが生じないという事実があったとしたら、ほんのわずかの人のために原則禁止モデルを採用することは、社会的にみて、きわめて多大なロスを生じさせることになります。この意味について法的に考えていきたいと思います。

EU、揺らぐプライバシー信仰

エコノミスト(最初は、と書いていました)の記事の翻訳で、日本経済新聞に「EU、揺らぐプライバシー信仰」という記事が掲載されています

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なお、以下の記事ですが、私の「新型コロナウイルス対プライバシー-コンタクトトレーシングと法」(アマゾン・キンドル出版)に所収しましたので、エントリとしては、撤回します。元の表現も併せて、同書にて、お読みください(同書 第3章 3.4 邪教としてのGDPR )。

「新型コロナ対策で、あなたはデータをどこまで提供できる?」と聞いてはいけない理由

「新型コロナ対策で、あなたはデータをどこまで提供できる?」という日経ビジネスのサイトでのアンケートがあります。

ある意味で、学術的なものとはまったく違うアンケートなので目くじらを立てることも全くないわけですが、もし、リソースを使うのであれば、この問題(コロナ感染者の濃厚接触者のトレースとプライバシの相剋)の本質に迫ることのアンケートを設計することができます。

まず、プライバシを調査する場合には、学問的には、プライバシーパラドックス(ブログでのまとめはこちら)に注意しなければならないというのが私の立場です。

プライバシーパラドックスというのは、「人は、プライバシについてリスクが高いものとして認識しているが、実際の行動では、個人情報を広く提供している」というものです。要は、プライバシーが重要だ、重要だといっている割りには、実際の行動では、プライバシーに配慮をしない行動をとるということです。

なので、プライバシーについて人間がどの程度、提供するのか、というのは、それ自体をいわば、単品で聞いては実際にどれだけ重要とかんがえているのかというのは、わからないということになります。心理学におけるいわゆる質問紙法というのは、プライバシーに関する実験としては、ほとんど有意義な結果をもたらさないということになります。

ここで、私の会社では、実際に、コンジョイント調査をすることによって、プライバシーの選好と他の社会的な価値とのバランスについて、アンケートの被験者が、どのような認知をしているか、というのを実験することができるというのを提案してきました。このコロナウイルスにおける濃厚接触者追跡アプリ(PP-PTアプリ-Privacy preserving Proximity  Tracing アプリ-と個人的には呼んでいます)をめぐる利用者の認知においても、このような実験がきわめて有意義であると考えています。

ここで、このアプリを受容してくれるか、ということに対して、3つの項目について、それぞれ3つの水準を考えてみましょう。

3つの項目としては、プライバシー、行動の自由の程度、日々の感染者数を考えることができます。

プライバシーについては、

  • 1)なんら提供せず
  • 2)接触情報のみローカルに保管(感染時のみアップロード)
  • 3)接触情報+GPS情報

を各水準とします。

行動の自由の程度については、

  • 1)完全自由
  • 2)断三密、厳格な自粛要請
  • 3)罰則付きの外出禁止

日々の感染者数

  • 1)毎日全国で、10名程度減少
  • 2)同250名程度増加
  • 3)同500名程度増加

をそれぞれの水準とします。

これらをくみあわせるカードは、以下のようになります。

 

これらのカードを好きな順番に並べてくださいという実験をやってみるとします。このように各要素のトレードオフを考えてみて、初めて、有意義なアンケートといわれると思われます。(学問的には、直交法によって実験の枚数を減らすことができますというのに従っています)

この調査でわかることですが、実は、国民は、感染者数を抑えられて、行動の自由をえられるのであれば、GPS情報をも提供していいと考えているのではないか、それとも違うのか、という論点に対する回答がえられると思います。

あとは、応用で、例えば、プライバシーをキーにして、ポイントがたまりますとか、活動範囲が広がりますとか、いろいろなアンケートと組み合わせることができます。そして、国民は、活動の自由のためであれば、どの程度、プライバシーの制約を我慢してもいいと考えているとか、ここでも、クラスターに分かれているとかもわかりそうな気がします。

ポイントは、プライバシーをめぐる政策でも、エビデンスをもとに決めていく時代になってきているのだという認識だろうと思います。

 

10th Anniversary of IT Research Art

当社 ITリサーチ・アートは、平成19年11月の設立以来、10年をすぎることができました。

脆弱性調査のためのリバースエンジニアリングの合法性の議論から始まり、プライバシーのコンジョイント調査、セキュリティインシデントと法の調査、通信の秘密、営業秘密、忘れられる権利、IoTのセキュリティと安全などについての国際調査など、本当にたくさんの調査に従事できたことを本当にうれしく、また、そのいずれのテーマも、わが国にとって先進的でチャレンジであったことを、我ながら、誇りにおもいます。

(ということで、調査実績をアップデートしました)

本年も

GDPR

といった最先端の国際調査を手がけることができます。

設立のときは、こんなに続けて、先進的な調査、それも、入札をへての調査(実感こもっているでしょ)ができるとは思ってもみませんでした。

今後は、さらに、先端的な分野(宇宙までいくか)や、実際のテクノロジーそのものへの挑戦をしたいとおもいます。

みなさま、今後ともご指導、ご鞭撻よろしくお願いします(あと、若い先生方は、一緒に遊んでね)。

平成29年11月 高橋郁夫

 

IBMのリコメンドに関するコンジョイント利用特許

IBMの(コンジョイント分析に関する)「情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム」の特許が、特開2016-045642で、発行しました。

ポイントは、従来のコンジョイント分析が「バイアス等の選択時の環境の影響は考慮しておらず、環境の影響を排除して選択主体の正確な嗜好を推定することは困難であった。」として「複数の選択環境のそれぞれにおける各選択対象の選択されやすさを示す環境依存度」加えて、ついでに、それを、「履歴データを用いて学習させる学習処理部」を備えて、学習させましょうという仕組みです。

当社では、コンジョイント分析が電子商取引における画期的な仕組みをなすだろうとふれてきました。さらに、これから、リコメンドの数が不十分なままで提案されることが多くなることが確実である(チャットボットや音声コマンドを考えましょう。)ことから、さらに、リコメンドをどれだけ有意義に使うかが、今後のビジネスのキーになることは明確だと考えています。(特に音声コマンドを考えたときに、一対対比のレコメンドがポイントと考えています。)

そこで、IBMが、コンジョイント分析に注目して、しかも、その主体の選考を正確に分析しようと、その影響を、学習させて是正するという特許を出してきたのは、きわめて注目されるものと考えます。この点、当社の特許は、むしろ、商品について計算力を考えて、限られた特性を計算することとして、それ以外は、説明力の限界として、まずは、やってみましょ、というコンセプトをもとにしているのと、正反対のアプローチといえます。果たして、環境依存度なるものが、どの程度、選択に影響を与えるのか、ユーザの履歴を収集するうちにほとんど無視しうるのではないか、それとも、このようなパテントのような学習による修正が有意義なものとしてなるのか、当社としては、前者ではないか、と考えていますが、なんといってもIBMさんなので、今後のなりゆきが注目されるということでしょうか。